ホームスパンとは、HOME(家)SPUN(紡いだ)という言葉どおり、
原毛から手染め、手紡ぎ、手織りによって仕上げる贅沢で暖かな毛織物のことです。

盛岡のホームスパン技術は明治の初めにイギリスの宣教師によって伝えられました。

ホームスパンは、古くからスコットランドやアイルランドの高原や
離島で自家用織物として作られていましたが、
現在では現地でさえ継承されていない貴重な技術です。
当工房では今では少なくなってしまった本物のホームスパンを守り、伝えています。

羊毛をわたのまま織り上げたようなホームスパンの基本は、
全工程を合理化せずにゆったりと仕上げることにあります。
すべての工程を手作業で行うため、完成まで時間と手間が掛かり
高価なものになってしまいます。
しかし、「本物のハンドメイド」を実感していただき、
当工房の作品が買っていただいた方にしだいに馴染み、
心に沿う愛着の一枚となれば幸いです。


羊毛の色はすべて違うため、同じ染め方をしても同じ色になることはありません。
そのため世界に一つだけの作品ができあがるのです。

ホームスパンの工程としては、まず刈りとったばかりの羊毛を
きれいに洗って干すところから始まります。
次に洗いあがった原毛を思った色が出るまで何度も染め、
染め上がった原毛を手でときほぐしていきます。
そしてほぐしたウールを線維の方向を揃えるために、
カーダーと呼ばれる道具を使って梳いていきます。
ここでいよいよ糸を紡いでいきます。
糸を紡ぐのは昔ながらの足踏みの糸車を使用します。
紡いだ糸を大きなボビンに巻きます。
すべてが手紡ぎの糸ではなく、
薄手で繊細な作品には細い梳毛糸(そもうし)を使用することもあります。
整経台に掛けたボビンから糸を引き出し、大きなドラムに巻きつけていきます。
綜絖(そうこう)、筬(おさ)と呼ばれる部分に
ふたり組みで何度も確認しながら糸を通して行きます。
そうしてようやく織り始めます。
「鶴の恩返し」の機織では「トントン」と表現されていましたが、
ウールではとても静かです。

そうして織りあがった生地を機から降ろしたら、
ふんわり感を出すための仕上げ洗いをして完成となります。

このような工程を経て当工房の作品はできあがって行きます。
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